最初のAlfa164 V6 3.0を購入したのは1990年の3月だった。当時乗っていた日産レパードを売って頭金にした。毎年3月になるとその頃のことを思い出しちょっとセンチになる。
初めての外車で、初めてのイタリア車。期待で胸がいっぱいだった。
長い間輸入元がなかったアルファロメオが、大沢商会の自動車部門、大沢自動車によって販売が再開されたのは1989年のことだった。1987年に本国で発売されたばかりの164。もうモデル末期となっていた75、スパイダー。たった三車種しかなかったけど、ディーラーに見に行くのが楽しみだった。今でさえ外車は当たり前の存在になったけど、当時はかなり敷居が高かった。
ディーラー下取りでレパードの査定をしてもらったらあまりにも金額が低かったので、中古車ブローカーに売った。ディーラー査定より50万くらい高かったと思う。業者に受け渡し日。当時はまだサラリーマンだったので、会社まで乗っていった。いきなりアタッシュケースから現金を出されたときは、結構緊張した。数百万の現金なんか数えたことがなかったし、会社の応接だったから。なんか絵的に悪いコトしてる現場みたいだし。
必要書類に捺印して、キーを渡すときはもの凄い違和感があった。だってディーラーの営業にしか自分のキーって渡したことが無かったから。見ず知らずの第三者にキーケースから外したむき出しのカギを手渡した時、なぜか罪悪感のような痛みを腹部に感じた。
その業者が助手席を空け、アタッシュケースをシートに置く。運転席にまわりクルマに乗り込む。ドアがパタンと閉まる。静かにウインドウが開き「では」と業者がかるく右手を挙げた。ドラマを見るようにボーっとその光景を眺めていた。ふと我に返り「ありがとうございました」と返事をした。
走り去るレパードを見送った。最初の交差点を右に曲がった。テールランプが赤く灯った。そのとき、初めて自分のクルマのテールランプの明かりを見た。初めて見た瞬間が、永遠の別れとなった。悲しくなった。もう一度「ありがとう」と言った。自分のクルマだったレパードに。
あの日も今日のような小雨交じりのどんよりとした天気だった。
Blog内キーワード検索
Categories
Archive
My Office
Leave a reply