ボルサリーノと聞いてなにを思い浮かべるだろう。イタリアの名門帽子メーカー? うん、あなたはなかなかお洒落オヤジだ。トラック野郎暴走一番星? あなたはちょっとダメダメ・オヤジ。映画「ボルサリーノ」を思い浮かべたあなたは、実に粋なオヤジだ。
実家に置きっぱなしにしていた映画「ボルサリーノ」と「ボルサリーノ2」を、なんか急に観たくなってわざわざ取りに行った。「ボルサリーノ」はアランドロン、ジャンポールベルモンドの共演で1969年の作品。2の方はアランドロンだけ。
フランスマルセーユを舞台に第二次世界大戦前のギャングの世界を描いた作品。イタリア・マフィアとも違い、シカゴ・ギャングとも違う、フランス独自のクールでウイットにとんだ痛快アクションムービー。ストーリーは割愛するが、機会があればぜひ見て貰いたい作品(2だけ観ても感動は半分。ぜひ2本連続で)。CGだらけの最近の映画に満腹気味なら、60〜70年代のフランス映画など口直しに最高だ。
この映画の素晴らしいところはライティング。二人の男をここまで魅力的に描くかというほど、暗闇の中でも目元を浮き立たせる。不自然な光線だけど、女でなくてもまさに男惚れする演出。
さらに、この作品の凄ところがとにかくディテールに拘っている。クルマ好きならヨダレものの戦前の名車の数々。ベルモンドが運転するブガッティなど壊したら大変だと観ながらハラハラしちゃう。酒やガンもマニアがニンマリするものが随所に出てくる。そして、なにより衣装。子供の頃、こんなにスーツの似合う人間がいるのかとショック受けたもの。
映画のタイトルでもあるボルサリーノのソフトを目深に被り、一ヶ所の寄れもないないほどボディーにフィットした三つ揃いのスーツ。袖からのぞく純白のシャツの出方も恐ろしいほど計算されている。ポケットチーフは状況に合わせ替え、シャツの襟はまるで金属で出来ているかのように固く立っている(上の画像を見ればイメージつかめるでしょ)。これがチンピラ映画にならないところが凄い。イタリア映画ともまた違う洋服のセンス。酒場で飲む崩れた格好の男達も実にセンスが良い。
ボルサリーノ2では黒の三つ揃いに真っ白なピンストライプ。世界中のギャングが真似した格好がそこにある。もちろん、今の世の中でこんな格好をしていたら陳腐だが、衣装を着こなすアランドロンの身にこなしには本当に脱帽する。久々に観て映画が楽しかったのはもちろん、センスのいいオヤジにならないとイカンと思うのであった。
余談だけど、アランドロンは昔マツダのカペラのイメージキャラクターでCMに出ていたけど、このボルサリーノのベルモンド役の名前は「カペラ」。マツダのCM観たときギャグだと思った。そしてダーバンのスーツのキャラクターをやっていた。就職して最初に買ったスーツはダーバンだった。ダーバン着ればボルサリーノになれると思ったけど、「ニッポン無責任野郎」の植木等にしかなれなかった・・・。