こう寒くなってくると、帰りしな屋台のおでんでちょいと一杯、な〜んて思うものだが、最近屋台が全然いないじゃん!(東京の私の生活圏では)
昔はよくガード下なんかに不景気な顔したオヤジが暇そうに客待ちしてたっけ。赤いおでんの提灯を見ると、なんとなくふらっと入って、日本酒の冷やでちょいといったなぁ。あのオヤジはどこに行ってしまったんだろう。
きっとコンビニが人情も情緒も無視して、一年中おでんを売り出したからに違いない。元凶はコンビニだ。だいたいコンビニのおでんは美味しくない。スチロールの容器も許せない。店によってはセルフサービスで取るようになってたりする。日本が生んだ世界に誇れる食文化の崩壊である。(でも値段は安いけど)
「オヤジ、お勧めは?」
「そうだなぁ、今はガンモが食べ頃だな」
「よし、じゃガンモとキンチャクにしようかな」
「おっとキンチャクはもうちょいだな」
な〜んていう言葉のドッチボールも、おでんのもう一つの『ダシ』だったりするわけ。長い箸で小皿に取り分けてくれる。餌を催促するツバメの子供のように、食べればまた次の、次が終わればまた次と、外は寒くてもいつも熱いおでんが食べられる。屋台には日本の家庭が忘れてしまった団らんがあるのだ。コンビニのおでんじゃこうは行かない。さっさと買ってとっとと帰れって感じでバイト君も機械的だ。
コートに片手を突っ込みながら、背中を丸めて食べるあの味。足下にある石油ストーブはちょっと火が出すぎで、餅でも焼いたら旨そうだななんて思いながら、コップ越しに映る隣の見知らぬ客の顔を覗き見たりする。しかし、帰る頃にはその客とも親しくなって酒を交わしていたりする。帰り際に「じゃまた」と声を掛けるが、名前も職業も知らない。また会える確率はほとんど無いのに、未練も後悔もない。
「じゃぁ、また」
潔さが屋台のおでんの醍醐味だ。あの屋台のオヤジはどこにいったのだろう・・・
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