有刺鉄線。侵入を防ぐための効果はほとんどないだろう。しかし、無造作に鉄柵に巻かれた有刺鉄線は頑として侵入者を拒む無言の威圧感がある。赤く錆びた鉄線。荒れ放題の雑草。日常生活には滅多に登場しない『実弾』『射撃』『隊長』という漢字。奥に見えるのは日本の象徴ともいえる富士山。
人は富士山を見てなにを思うのだろう。平和の象徴と感じる人もいるだろう。日本人の侘び寂びを感じる人もいるかもしれない。四季折々の富士山を見て動的な生命力を感じるかもしれない。
しかし、有刺鉄線の向こうに見える富士山は、どこか悲しげで感情を失った囚人のように物憂い表情に見える。
平和の象徴でもある富士山に、平和維持する日本の軍隊が演習という名の砲火を浴びせる。遠くに聞こえる砲弾の音に混じって富士山の苦痛の叫びも聞こえるような気がした。
富士山が世界遺産に認定されないのはゴミの問題と言われているが、本当のところは、日本の象徴と言いながら自国の軍隊が日本人の心の富士に大砲を撃っているその姿が、他国の民には到底理解できないからではないかとふと思った。
2 Comments
>tonpoo さん
奇麗だけじゃない、もうひとつの側面も富士にはあるような気がしてます。
囚われの富士ですか…
不思議と合わせる景色でそんな風に見えるもんですね。