携帯電話が鳴った。独立前まで勤めていた会社の入社当時の上司からだった。電話に出ると本人ではなく奥さんからだった。心臓発作が原因で亡くなられたという訃報だった。「心臓発作?」最初話がわからなかった。心臓が悪いという話を聞いた事も無いし、つい先月電話で話したばかりだ。病院で意識が戻らぬまま帰らぬ人となったらしい。まだ50代前半。あまりにも若すぎる。
その会社では企画部に属していた。中途入社の自分に業界事情や社会人としての基本を細かく指導してくれた人だった。企画部だから当然さまざまな企画を立案しなくてはならない。案件を説明すると「いいじゃん。やってみれば」が口癖だった。この時の自由に仕事をさせてもらえる環境があったからこそ、独立後の自分に大きく役立っているのだと思う。結婚式では乾杯の挨拶もしていただいた恩師ともいえる人だった。
自分が辞めた数年後に、その人も脱サラでコンビニ経営を始めた。猛反対したのだけど「いいじゃん。やってみるよ」と聞かなかった。しばらく音沙汰がなかったが、突然事務所にふらっと遊びに来て「店をたたむ事にしたよ」と憔悴した感じで語った。その後転職を何度か繰り返し、落ち着かない生活になっていた。どこか歯車がうまくかみ合ってないような、悪いオーラに包まれてるような感じだった。もしかするとその時期の苦労が心臓に響いていたのかもしれない。「いいじゃん。やってみるよ」はもう言わなくなっていた。
しかし、そんな悪い運気を振り払うかのように,昨年再び事業を興し再起を図ったばかりだった。仕事の相談に乗って欲しいと、うちの事務所にも来る機会が増え、大変そうだけど頑張ってる感じだった。
そんな矢先の訃報。電話で通夜の場所を聞きながら、「いいじゃん。やってみれば」と笑っている20年前のその人の顔が思い浮かんだ。
くしくも今日は、13年前、自分がその会社に辞表を出した日だった。時というのはどこかで繋がっているのだろうか・・・・
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3 Comments
以前、ある人から 「この世の中に偶然ってないのよ。偶然に見せかけて、実は意味があるのよ。」 って教えてもらった事があります。
その亡くなられた方も、NOBUさんに 「俺のこと忘れるなよな」とか、たくさんのメッセージをその日付に託されたのではないでしょうか?ご冥福をお祈りします。
これ、N嫁のコメントやしね!
一年中けなされっぱなしやのに、私ってほんま、懐が深いわあ~~。
>SMOKY さん
お気持ちありがとうございます。
故人とはある意味戦友でもあるので、死水はとってあげたいと思っています。
きっと黄泉の国でもなにか文句を言ってると思います。
僕も昨年、師匠が亡くなって何か心に穴があいたような感じがしました。フリーランスでやっていると叱ってくれる人がいないので、今の自分の仕事の方向性が間違っていないかとか、ちょっと自分に甘くなってはいないかとか、判断に悩む時がありますね。今でも夢の中では怒られたりはするのですが。お悔やみ申し上げます。