行きつけの新宿のカメラ屋を覗いてみる。「なんかある?」「ありますよ(ニヤリ)」「おおっ怖い笑顔」。会話のドッチボールが素早いと実に気持ちがいい。優柔不断な店員は嫌いだ。だからこの店員と話しているとついついあれこれ買ってしまう。
ゴソゴソと段ボールからプチプチビニールに包まれた物体を取り出して来た。「まだ店に出してない上物ですよ」マカオ辺りの麻薬の売人のように唇だけで笑う。出て来た物体はエルマーの沈胴90mmのレンズだった。「90mmは持ってなかったですよね」「よくご存知で」「(ニヤリ)」
実は沈胴(使う時に伸ばして撮る伸縮タイプのレンズ)の90mmは前から欲しかったモノ。なかなかこの店員、くせ者である。50年も前のレンズにも関わらず外観はまったく傷や汚れも無く、まるで新品のようだ。胴のクロームも美しい輝きを放っている。今まで見たエルマーの中では最高にいい。
しばしレンズを覗き込んで点検していた店員さん、おもむろに「やっぱダメだ」と仕舞おうとする。
「ちょ、ちょとどうしたの」「レンズにちょっとだけ傷がありました・・」見てみると、言われないと気がつかないほどの小さな傷が確かにあるが、まったく問題の無い許容範囲だ。クモリやスレも無く撮影に影響はまったくないだろう。この店員、商売っけがあまり無いところも好きだ。絶対に無理に勧めない。
「これくらいなら大丈夫じゃん」
電卓を取り出すと「じゃ、いつも買っていただいてるので・・・パチパチ・・本当はこの値段ですが・・・パチパチ・・・・特別これでどうです」おおっ安い。銀座の某ショップで見たボロボロのエルマーより全然安い。
「(ニヤリ)」*今度は自分
探していたモノが予想外に安く手に入ると、とても幸せな気分になれる。早く梅雨が明けないかな。
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