日本映画界で好きな男優は誰かと問われれば、即答で『三船敏郎』と答える。理由なんてない。子供の頃から大好きな俳優だった。
当然ながら三船作品は数多く見ている。しかし、他界してすでに20年。残念ながら過去の作品しか観ることが出来ないのだが、自分の中では『三船マイブーム』が再熱。黒澤作品から三船プロ時代まで、レンタルDVDを借りては感動に涙してる。
アラン・ドラン、チャールス・ブロンソンと共演した『レッド・サン』が観たくてレンタルDVD屋でスミからスミまで探すが置いてなかった。う〜ん残念・・・と諦めかけたとき棚のかなり高いところに『太平洋の地獄』の文字を発見。「おおっ!!」
リー・マービィン、三船敏郎共演の1968年のアメリカ作品。子供の頃、TVのロードショーで観た以来。内容も半分以上忘れかけていたので今回はこれを借りてみる。
太平洋戦争末期、南海の無人島で独り、見方が近くを航海するのを待つ日本軍兵士三船敏郎。そこに、アメリカ空軍のパイロット、リー・マービィンが零戦に体当たりされ不時着し命からがらその島に流れ着いたところから物語はスタートする。
二人は互いに敵国同士。自らの命を守るために戦いを挑むが、銃も刀も無く、アメリカ兵の持つ小さなナイフと、日本兵の持つ木刀のみ。心理作戦による奇策で戦うが、アメリカ兵は脱水症状であえなく日本兵の捕虜に。言うことを聞かないアメリカ兵に業を煮やした日本兵はナイフでアメリカ兵を殺そうとするが、思いとどまりそのまま捕虜としておくことに。
しかし、賢いアメリカ兵に形勢を反転され今度は日本兵が捕虜に。アメリカ兵は携帯していた軍事マニュアルを読み返す。「無人島での捕虜は足でまとい。すぐに殺すべし」と書かれてあったが、マニュアルを投げ捨ててしまう。
ほどなく無人島でこんな無益なことをやっていても仕方が無いと気付いた二人は、島を脱出するためにお互い協力してイカダ作りを始める。そこから敵味方を越えた不思議な人間関係が生まれ、二人は荒波の太平洋に向かって舵をこぎ出す。
そして・・・・・
男臭い映画である。登場人物は三船敏郎とリー・マービィンの二人だけ。女性も子供も一切登場しない。戦争映画なのに飛行機も戦車も戦艦も一切登場しない。拳銃やマシンガンも無い。ボロボロの軍服にボウボウの髭だらけの顔が画面一杯に映っている。
二人の強烈な個性がぶつかり合い、2時間弱もあっという間に過ぎて行く。
1968年と言えば三船敏郎が黒澤作品での一区切りをつけ世界に羽ばたきだした頃。アメリカ人から見て頑固な日本兵はまさに三船敏郎以外考えられなかったのだろう。
日本人とアメリカ人だから会話が通じない。早口でまくしたてるアメリカ兵に「うるさい!」を怒鳴りながら連呼する姿は、まさに三船節。個性派と言われたリー・マービィンもすっかり影が薄くなる。
戦争映画というと銃撃戦ドンパチに終始しがちだけど、実際の戦場では武器も無く食い物も無く生身の人間が素手で殴り合って、そして戦争の虚しさと馬鹿らしさを感じていることを、映画を通じて表現したかったのだろう。
派手なアクションも一切無く、淡々と話は進んで行く。忘れかけていたラストシーンを観て改めて愕然とする。
残念ながらセルビデオは廃盤のようなので、興味ある方はレンタル店で。
せっかくデジタルになっても過去の秀作が廃盤になってしまうのはもったいないよね。素晴らしい映画はまだまだ埋もれているから、ダウンロード販売でもしてくれることを切に願う次第。
男は黙ってサッポロビール。三船バンザイ!
3 Comments
「太平洋の地獄」って知りませんでした。
あらすじを読むと、面白そうですね。
こういう映画をボォーっと見ているのが好きです。
僕の師匠は三船さんのスチールを撮っていました。この映画のロケに同行した話やレッド・サンのパーティーの話を酒を飲みながらよく話してくれたものです。当時の業界は個性のぶつかり合いが面白そうで羨ましい時代ですね。
私も三船敏郎が一番好きです。セリフが籠もって聞き取れないところが気になったときもありましたが。
先日、TVで「レッドサン」を見ました。数多く見ているので時々ストーリーがこんがらがります。
『太平洋の地獄』はなぜか見ていません。知りませんでした。
たいしたファンではありませんね^^。