Certo Dollina II(ツェルト ドリナ 2)。製造から既に75年も経っているカメラだが、しっかりした色合いで心地がいい。
1936年といえばベルリン・オリンピックが開催された年。ナチスがその権力を掌握しヨーロッパ全土が緊迫する情勢下の中で開催され、様々な逸話を生んだ大会でもあった。開会前の聖火リレーもこの大会から生まれたものだし、多くの日本人もメダルを獲得し欧米にその力を知らしめた大会でもあった。
ツェルト社は1902年にドレスデンで産声を上げた。ドレスデンには行ったことは無いが、我々日本人にも『ドレスデン爆撃』で歴史のページに刻まれた都市であることを思い浮かべる人も多のではないだろうか。
1945年第二次世界大戦末期、ナチスドイツの敗戦が濃厚な中、後にテロ爆撃と言われる連合国軍(主幹はイギリス軍)による無差別爆撃が行なわれた。一般市民の犠牲者数ではヨーロッパ最大といわれ、時の首相チャーチルさえもイギリス空軍に苦言を呈している。日本人にとって長崎・広島があるように、ドイツにとってドレスデンは決して忘れることができないワードなのかもしれない。
そんな悲劇的な運命を背負ったドレスデンは、敗戦後ソビエトに統治され『東ドイツ』という社会主義体制の中、ツェルト社もまた『東側』の企業としてその運命を辿る。
このCerto Dollina IIを『東ドイツ』のカメラとして紹介しているHPが多いが、それは前記の通り明らかな間違いだ。Super Dollina II 以降は確かに東ドイツ時代のものだが、それまでのモデルを『東ドイツ製』とするのはいかがなものかと思う。
カメラでも時計でもクルマでも、不思議なものでそれを所有するとそれが生まれた『故郷』を訪ねてみたくなる。『ドレスデン』その叙情的な響きをもった街に、いつの日かDollina IIを持って里帰りさせてあげたいと思う。
数年前に『ドレスデン』という映画も公開された。ドイツ映画なのでレンタル店にあるか分からないが、こちらもぜひ観てみたいと思う。
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