デザインが素晴らしいモノというのは所有するだけで心までハッピーにさせてくれる。機能だけを追求したモノにももちろん美しさは存在するのだが、ちょとくらい機能が劣っていてもそれをねじ伏せるような圧倒的なデザインを前にすると無条件にひれ伏してしまうのだ。
デザイン王国イタリア。ファッション、ジュエリー、家具、自動車・・・どれをとっても世界をリードする個性的なデザインを次々と生み出し君臨してきた。しかし、ことカメラにいたっては日本製カメラが世界を席巻し、イタリアンブランドはすべて滅びてしまった。
が、やはり半世紀以上の年月が経過してもイタリアンカメラはビリビリするほど個性的で美しいボディーをもったものが多い。その最右翼がこれベンチーニの『COMET III』1953年製。
あまりにも美し過ぎるデザイン。まるで8mmカメラのような意匠にオールアルミの鋳造製。今では死滅してしまった127フィルム(ベスト判)を使用し、縦長のボディーだが3×4の横長の画角の写真が撮れる。
しかし、その奇抜なボディーデザインとは裏腹に、レンズは75mmf11らしい単玉。シャッタースピードはBと1/50しか選べない。ピント合わせは目測。使い捨てカメラと同じレベル。1953年という時代を考えてもあまりにもロースペック。フェラーリのボディーに軽自動車のエンジン載せて売っちゃった感じ。
だけどね『bencini MILANO MADE IN ITALY』なんてフロントに誇らしげに書かれると、アルフィスタのイタリアイズムがビリビリとくすぐられて絶対に欲しくなる逸品。実はまだ試し撮りしてない。20年以上前のコンパウンド『ピカール』でせっせと磨き、アルミの鈍い輝きを見ているだけでもう撮った気になれるほどうっとりする美しさなのだ。
ありがちなチリの甘さや鋳造のいい加減さも、イタリア製というだけで許せるから不思議だ。歴史にもしもは存在しないが、35mmフィルムで高性能なシャッターとレンズを搭載していたら、きっと大化けしていたカメラだったろうと思う。
1953年製。九重佑三子よりちょっと年下で、大場久美子よりちょっと年上のコメットさん。キラキラ星なカメラなのである。
2 Comments
>taku さん
いや、実はたいした照明もなく撮ってるんですよ。撮影方法見られたらビックリすると思います(笑)
今度解説記事を書きますね。
いつもブログに載っている素晴らしい写真を拝見させてもらっています。
たまに魅力的なクラッシックなカメラの紹介があり、自分みたいなカメラ素人にもすごく興味深く勉強になります。
今回のカメラも見た事がないデザインで面白いです。
また掲載しているカメラの写真はどうやって撮影しているのですか?カメラボディ撮影はすごく難しいので、こんな風にカッコ良く撮影してみたいものです〜