ファッキン

飲み屋でボトルを入れると名前を書かなくなてならない。職業柄ここは妥協出来ない。ずらりを列んだボトルで素人さんのタイポグラフィーに負けては恥である。いかにインパクトがあり芸術的に自分の名前を書くか。マジックなので失敗は許されない。一筆目、ベロベロに酔いながらも緊張の一瞬。
・・・・・・あっ、まちがえた！

『ゆ』と書くつもりが意味不明の物体に・・・。う〜む、しかたないのでキース・ヘリング風に誤魔化す。失敗を強引に誤魔化すのもプロの技である。
グタグタになりながら店を出る。フラフラしながらCOCOAと歩いていると、先方から大学生か新入社員とおぼしき男女のグループが。かなり酔ってるようで声がでかい。ひときわ先頭を歩いている女の子の声がでかい。
「お〜い、ファッキンするぞ、ファッキン！」
ん？ファッキンと言ったような？？
「ファッキン、ファッキン、ぎゃはははぁ」
女の子はファッキンと大声を出しながら笑っている、周りにいる仲間も笑っている。道一本挟めばラブホテル界である。時刻は深夜26時。
若者の性の開放はここまで進んでいるのか？！・・・なんて素晴らしい。できることならお仲間に入れてもらいたい。好奇心がメラメラと沸いてきて、どこのラブホテルに消えるのか追ってみたくなった。
「え〜、俺はケンタがいい。ケンタ」
健太？誰？？・・・・・もしかしてケンタッキーフライドチキン？？
「ぐぇ〜ファッキンの方がいい」
ファッキン？　ケンタ=ケンタッキー。ファッキン=ファーストキッチン？
「しょうがねぇな〜、じゃファッキンでいいよ」
うがぁ〜、なんだよファーストフードかよ！　どうやら『ファッキンするぞ』と聞こえたんだけど『ファッキン”に”するぞ』と言っていたようである。若者よ、ラブホテル界で紛らわしい略語を言わんでくれ。
でも、ちょっとだけ勝手な想像で楽しめたから、まぁ良しとしよう。