日本映画はあまり観ないのだけど、60年代の邦画は別。日本映画全盛の頃の邦画は今観ても唸るような秀作が多い。大袈裟なCGも無ければ特殊効果も無い。純粋に演出勝負という潔さと、映像現場での実験的な挑戦が40〜50年経った今観てもことさら新鮮に感じる。
さすがにリアルタイムで観た訳ではないが、子供の頃はテレビで放映された東宝、東映、日活、大映なんかを食い入るように何度も何度も見ていた。
最近はレンタルビデオで当時の記憶を辿りながら、もう一度改めて見直している。他界してしまった役者さんが多いのは至極残念だけど、昔の俳優は男惚れする『カッコいい』役者が多かったと思う。
そんなこんなで久々に観たのがこれ。男臭い役者の1人宍戸錠主演、鈴木清順監督、日活1967年作品『殺しの烙印』
冒頭から独自の世界観が込められ鈴木清順ワールドが展開する。フィルムノワールな重く暗い虚無感ある殺し屋達の戦いが描かれる。1967年は既に映画はカラー化されていたが、あえてモノクロでハードボイルドを打ち出した本作は、作品内容に日活上層部の批判をかい、鈴木清順は日活を解雇され、宍戸錠は客が呼べないスターとレッテルを貼られた問題作。
じかし、熱狂的なファンを多く掴み、日活解雇に抗議するデモ運動までおき社会現象ともなったカルト・ムービーの傑作。海外での評価が特に高く、本作の影響をうけた海外の監督も多いという。
出演は謎に包まれた殺し屋ナンバー1役に南原宏司。『網走番外地』『女因さそり』『蘇る金狼』なんかが印象に残ってる名傍役。ちょっとサイコチックな笑い方や独特な台詞回しはハードボイルド作品には欠かせない存在。TVにも多数出演していたので覚えてる人も多いことだろう。2001年永眠。
組織の謎の美女役に真理アンヌ。懐かしいと思う人も多いのでは。『11PM』で藤本義一のアシスタントとしてTVでお馴染みだった。宍戸錠を殺しに現れるが恋に落ち、組織を裏切ったと拷問にあってしまう。19歳の裸体も露に神秘的な美女を熱演。
殺人を依頼する謎の手配師役に玉川伊佐男。刑事物や社会派ドラマには必ず登場するといっていいほど多数のドラマにに出演していた名悪役。いつも怒ってる役が多かった気がする。2004年永眠。
元はナンバーの付く殺し屋だったがアルコールに溺れ銃も持てなくなった殺し屋役に南廣。ウルトラセブンのクラタ隊員と言った方が分かりやすか。1989年永眠。
アクション、エロチシズム、サスペンス。三つの要素が三部作のように折り重なりながら続く。三つのテーマの演出にかなり違いがあるので、なんでだろうと思っていたら、DVD特典映像の中で鈴木清順監督が語っている内容を聞いて納得。3人の脚本家に書かせ、それを無理矢理繋ぎ合わせたらしい。道理でどこか違和感があると思った。
しかし、その違和感が作品の価値を落としていることはなく、逆にフランス映画にありそうな謎めいた人物設定に役立っている。
どんな組織なのか、殺し屋のランクはどうやって決めているのか、謎の美女はどんな人間なのか、そういった細かい説明は一切無く、淡々とストーリーは展開して行く。まさにハードボイルド小説をそのまま映像にしたような、一人称で話は進んで行く。主役の宍戸錠はタフではなく、やけにヒューマニティー溢れる男として描かれている点も、当時の日活王道路線からは外れていたのかもしれない。
賛否両論あるまさにカルト・ムービー。最近は監督業より役者業の方が多くなってる気がするが、清順ワールドに久々に浸りたくなったら、この『殺しの烙印』は逸品だと思う。
4 Comments
エースの錠ですね。
実は私、昔の日活映画、大好きなんです。。。
この映画は観たことないんですが、宍戸錠、かっこよかったです。いちばん好きなのは小林旭なんですが。
残念ながら、この映画は見た事がありませんが。
モノクロ映画は、味があって良さそうですね。
最近はデジタルで画面が綺麗過ぎので、
余計に昔の映画が味わい深いと思ってしまいます。
何を狙っているのかしら・・・。
僕は、あまりこういったものをみてなかったけど・・・
父さんがいまでもみているなぁ~^^
しかし何で組織に謎の美女?って・・・いつも綺麗な人なんだ!?wって思うw
しかも、またモノクロだから味が出てる・・っていうか・・・^^
セクシーに見えますねw