一昨日の金曜日、写真の教え子でもある一鬼のこ(Hajime Kinoko)くんの個展『一鬼のこ10周年記念展示「僕が松茸になるまで」』に行ってきた。
世界的なロープアーティストである一鬼のこの10年間の1000作品と2つの巨大ロープオブジェ、世界で経験した秘蔵動画などが展示されたまさに集大成の展示会。エッセイ本の出版記念も兼ねての堂々たる展示会で、4年前に「カメラは何を買ったらいいですか?」と訪ねてきてくれた日のことが昨日のように蘇る。
自分が教えたことが微弱ながらも作品の中に影響を与えることができているとしたら光栄なことであり、また名誉なことと感銘する。
緊縛?!という人も多いかもしれないが、アンダーグランドな世界の中にも写真を通して芸術性を昇華させた功績は大きい。
かくいう自分も緊縛はあまり理解してないし、今でも正直よくわからないかも。ただ、彼の作品に共通するのは単なるエロチシズムではなく『愛』が感じられること。
写真を習いに来てくれた頃は、当然ながら絞りとか焦点距離とか全くわからない初心者。それがたった数年で写真集を数冊だし個展を開くまでに。アーティストというバックグラウンドがあるメリットを差っ引いても、撮ることに対しての貪欲なまでの執着と向上心があっての結果だ。
生徒さんから「写真を上手く撮るにはどうしたらいいですか?」とよく尋ねられる。
さて『上手』とはなんだろう。
写真は料理に似ている。単にテクニックや技法は習えば誰でも撮れるようになる。いわゆる上手(じょうず)な写真は時間さえかければ出来るようにはなるだろう。でも写真で大事なのは上手(うまい)写真ではなく、美味い(おいしい)写真だ。まさに料理と同じ。
ファミレスやコンビニの料理も決して不味くはないが、お世辞にも美味いとは言えないのと同じ。いくらマニュアル通り作っても愛情が感じられなければ美味しくない。どんなにバランスの良い健康食だって、そこに愛情がなければ感動もない。
つまり写真で大事なのは『家庭の味』を出すこと。お袋の味まで辿り着ければ立派な個性だし、有名店にも負けない。構図だの画質だのに囚われて商業写真の真似ごとばかりしていても決して美味い写真とは言えない。被写体をどれだけ愛し、全神経を被写体に向けられるか。
いい写真とダメな写真の別れ道はそこにあると思う。
習い出しの頃の作品から直近の作品まで、壁全面に貼られた数百点の作品を観ながら、彼の成長の過程もしっかり感じ取れたし、細かい技術的な面も画の持つパワーに圧倒されありふれた添削も無に帰す。作品全体に統一されたテーマが感じ取れ、楽しくもあり有意義な時間が過ごせた素晴らしい展示会だった。
今月は知り合いやお友達の写真展が目白押し。教えることや見るばかりでなく、自分もやれよって話ですが・・・・・はい、忙しいという言い訳はしません!
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